5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

AAバトルロワイアル5 -You must survive.-

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/23 01:32 ID:igC2OJvy
         ,,i,、                                  ,,,,,,iiiiii,
         'llllli,,                               ,,,,,iiiill゙゙~`゚゙゙!li,
  ,,,       ll゙!llllii,,                          _   .゙゚゙!llllli,  lli, ゙
  llllii,、     .ll ゙゙!llllli,,                        ,,,,iiiiil゙゙′    ゙llllli,._,,llli,  .、
  'll!!llli,,     llL,,,,llllllli,,、                ,,,,,,llllllli,"゙!lllll,      ゙!llllll゙゙゙゙!li, .ll,、
  .'ll ゙゙!lllii,、   'll゙゙” .゙゙llllli,,,,、           ,,,,,illlllllllll, .゚゙!l,, .゙llllli,    ., ゙llllli, .” ,llli,
  ll、.,,llllllli,,   ll,、  .ll!゙゙゙″     .,,,,,lliiilllilllll` ゙lllll,,  .゙゙′゙llllli,    'li, ゙llllli, ,,,,ll!!!゙'
  .lllll゙゙゙`゙!!lllii,,,,,.,,l!!l゙゙′     ,,,,,iillllllllll、.゙゙゙!il!l、 .゙llllli,    ゙llllli,   lllli,.,,lll!!!゙゙゙
   ll、  ,,!!!l゙゙゙゜     _    .゙!lll′.゙llllli,  ゙゙”   '!lllll,    ゙llllli,_,,,,,ll!!!゙"’     .,,,,,liiiilii,
  ,,lllll←         'llli,,   .゙!l、 .゙llllli,      ゙llllli,   .,,ll!!!゙゙゙″     ,,,,iiiiill゙゙^ `゙゙!li,
  .″           ll!lllli,,   .゙′ .゙llllli,      ゙lllllillォ  `      ,,,   ゙~゙!llllli, .'li, ゙
     _,,,,,lllllllllllii,,、   ll,゙゙!lllii,,     .゙llllli,     'll゙゙゙’      .,,,,iiiilll゙°    .'!lllll,_,,illli,  ._
   .'lll!lllll,、 .゙lllllli、   ll、.゙゙!lllii,,     .゙llllliil,i、       ,,,    `.゙゙llllli,      ゙!lllll ゙̄!i, .lli,
     .'!lllll,  ,ll!!°   .llllllll゙゙゙゙!lllii,,   'lll゙゙゙゛           lllli,,    .'!lllll,    ,,、゙!lllll, .` ,llli,
      ゙lllllillllll!l!!llllii,,、 .ll,   ._llll!!!l゙'       .,,,,iiill″  .lll!lllli,,    .゙llllli,    lli, ゙llllli,._,,,,ll!!!゙゙
      ゙!lllli,   ゙lllllli、 .lliil,i、 ゙’     .,,,,,,ii←” ゚ll!    'll`゙!lllli,,   'lllllli,   .,lllli,.,,ll!!!゙゙゙
       .゙llllli,  ,llll!゙  ゙゙″        ゙゙゙!lllllli,,、 ll、    .ll、 ,゙lllllii,,   ゙llllli,,,,,,,ll!!!゙゙ `
          ゙lllllillllll゙゙゙`      ,,,llllllllliiii,,,  .゙゙!llllli,,,,ll′    llilll゙゙゙~゙!lllli,,,,,,.,,l!!!l゙゙゙゛
       'l゙゙゙’         ,,ill°  ゚゙llllli,,   .゙゙!lllllll,、    .ll、  ,,ll!!!゙゙゙
              ,,,,,liiiiiii,,、  lllll,    .゙llllll,、   .゙!lllll,,   .,,,lllllト
         ,,,liiillll゙’ .゙゙llllllli、 lllllli,    .゙llllll、   .゙llllli,,,,, '゙’
             ゙!lllll,   llllll  ゙llllll,、   lllll|    ill!!゙゙゙
           ゙llllli,,,,,iillll′  .'゙!lllli,,   ,ll!
           '!lllll, '゙!!lllli,,,   ゙゙!!!llll,,,illl゙’
               ゙llllli, ゙゙゙!lllli,,,,,,
               ゙llllli,,,,, ゙゙l゙゙”
               ,ll!!!゙゙゙゜

■■■■■■AAバトルロワイアル雑談スレ■■■■■■
http://aa2.2ch.net/test/read.cgi/aasaloon/1067821682/

※ここは本文を投稿するスレッドです。雑談や感想などは上記の雑談スレでお願いします
 尚、この作品はAAバトルロワイアル4の続きではなく、完全なる別世界の物語です。

詳細は>>2-6くらい

このスレは、小説「バトル・ロワイアル」と同様に
アスキーアート(AA)のキャラに「殺し合い」をさせるスレッドです。
内容はリレー小説形式ですが、もちろんAAも受け付けています。
ちなみにAAキャラは学生の設定になっているんでその辺りを了承しておいてください。

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 16:54 ID:72OiY+wQ
坂田師匠はじっと、柱の裏に隠れていた。
それはとてつもなく長い時間に思えたし、一瞬の刹那にも思えた。
カッ。回転ドアを開ける音が聞こえ、誰かが近づいてくるのがわかる。
出来上がっていない天井からは空が見えた。音は響いた。
マガジンを差込み、ベレッタをいつでもつかえるよう身構えた。
足音は近づいてくる。うわあ、まずい。そうだ、消火器。
めくらましくらいにはなるかも・・
彼はあわててデイパックから消火器をとりだし、柱から身を出して
消火剤を噴射した。ブシューーーーーー。
もくもくと白い煙が出る。彼は消火器を投げ捨て、ベレッタを構えた。
しかし、その煙の中から現れたのは1さんだった。



70 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 19:37 ID:2iLAD5OH
モネー(女子16)番は、銃声やら何やらが聞こえ、殺し合いが続いているこの島の中、木と茂みに覆われた場所で身を隠していた。
東の空には既に日が昇っている。時計を見ると、午前7時前を指していた。
このエリアはA-5エリアだが、すぐ下のA-6は九時から禁止エリアになるらしかったので、少々北側にいた。南側に行きすぎると、いつA-6に入っているか分からない。
モネーは右手に持っていた錆びた金属棒(エリア51からここに来るまでに拾ってきたやつだ)を地面に置き、足を伸ばした。
このエリアは島でも一番端、あまり人は来ないんじゃないかと考えた。
―――もちろん、このゲームでは絶対に優勝しなければいけない。
自分のような中学三年生の女の子がこんな場所で死ぬなんて考えるだけでも嫌だった。もちろんここでは、最後の一人になるまで生き残らなければならない。
ただこんな金属棒だけで一体何ができるだろうか?
―――いや、大丈夫だ。大丈夫、デイパックから出てきた時は首をかしげたが、この支給武器は生き残る上で便利だ。
そう思ってモネーはセーラーの腹を、その支給武器―――防弾チョッキの感触を確かめるように触った。
武器が乏しい今は、隠れに徹することだ。他の奴らが殺し合って、最後に自分が出てきて相手を倒せばいいのだ。とにかく今は、隠れなければ。
ふと、フェラーチョ(男子17番)のことを思った。
彼は朝の放送で名前が呼ばれた、つまり死んだということだ。もちろん彼女にとってそれは以外であった。最後まで残りそうな人間の中にフェラーチョが入っていたからだ。
放送で名前が呼ばれた時は「あら、ちょっと早すぎるわね」と鼻で笑った。
彼女はフェラーチョ軍団とつきあいがあったし、彼女自身自覚するほどの不良だった。万引きは日常茶飯事、時には恐喝や、そう売春もやったことがある。
フェラーチョも同じような人間だった。だからって特別好きなわけでもなかったが。
フェラーチョ軍団は他のクラスか下級生までも集めた不良集団だ。いじめとか喧嘩とか恐喝とか―――まあ基本的なことをやる。
このクラスはいじめられっ子が結構多いなと、思ったことがある。
みるまら(女子13番)とかがよくしぃ(女子6番)やでぃ(女子9番)などをいじめていたが、モネーはそんなものに興味はなかった(そういえばみるまらも放送で死んだと言っていた。フェラーチョ軍団の中でも希少な女子だったので話したりすることはあった)。
―――しぃ、そういえば彼女の姉はあの後自殺したんだった。
去年のことだった。まだ幼かったモネーは、いじめという子供の遊びを楽しんでいた。今ではもう飽きてやっていないが、あの時の標的は主にしぃだった。
あの日、いつものように嫌がらせをして帰った後、突然しぃの姉と言う女がフェラーチョの家にやって来た(この時モネーはぼるじょあ(男子18番)と共にフェラーチョの家にいた)。
「ちょっと、あたしの妹のしぃをいじめてるらしいわね」
「あ?ああそうだけど」
「妹が私に相談してきました。そうとうひどいらしいわ、やめてもらえないかしら」
「何だよめんどくせ」
「妹が自殺するかも知れないでしょ!」
じぃが声を挙げてそう言った直後に、フェラーチョはじぃを殴り飛ばし、じぃの体が壁に押しつけられた。
―――あとの説明は特にいらない、まあフェラーチョがじぃを強姦したという話だ。モネーは女だったので何もしていなかったが、特に止めることもしなかった。
翌日、そのじぃが自殺したという話が耳に届いてきた。フェラーチョは少し驚いた顔を見せたが、それでも「大丈夫だろ、証拠はねえんだ」と言って教室を出て行った。
三年になり、いじめの標的が増えたことや、しぃをいじめることを同じグループのネーノ(男子15番)やグループにいるのか一匹狼なのか分からないギコ(男子7番)が引き止めたため、しぃに対するいじめは少なくなって行った。
特にあの事件に対しモネーは何も思っていなかった。自業自得だろう、喧嘩を売る時は相手を見てからの方がいい。
そこまで考えて、モネーは足を折り曲げた。今はとりあえず、待つことが先決だった。

【残り39人】

71 :ノレ@|゚ー゚ノ ◆E8Y5gFbllU :04/01/31 20:08 ID:a2tVhHR1
なんでだろう…

男子3番「ッパ」はエリアBに入っていた。(4-Dあたり
放送を聞いて既に3人の死を知った。しかし、落ち込んでる場合ではない。
ッパはいっしょに脱出(または特攻など)をできる仲間を探していた。
(このエリアBだと、銃を持っている人が有利だね)
ッパの支給武器はノートパソコン。支給「武器」とは違う気がする。
つまり、銃を持っている。やる気。この二つがそろった人間にあったら危険だ。

ッパは歩きながら頭を回していたが、目にうつったあるものに、思考はさえぎられた。
男子6番「おにぎり」だ。
あれが支給武器なのだろうか、あまり靴をはかないAA達だが、靴をはいている。
鉄の、とがった物が裏についている。スパイクだ。
「けられると痛いかも…」
そんな事も考えたが、やはりここで考える事は、話かけるべきか否か。
「おにぎり君なら仲間になってくれるかもしれない。」
おにぎりはクラスの中ではとてもいい印象がある。フェラーチョ組にいじめられていた子を助けたこともあったらしい。
いつも明るくて、わっしょい、わっしょいしていることが多かった。(意味は解からないが
そうゆうことで、ッパはおにぎりにはなしかけてみることにした。

ッパは少しずつおにぎりにちかづいた
おにぎりのすぐ後ろにきたとき、おにぎりが振り向いた。
「!!!」
おにぎりは突然のことにただびっくりした。そんな、おにぎりにッパは
「や、やぁおにぎり君…−−−」
ッパは突然言葉につまってしまった、
「あ、あのさ…」
こうゆう時はこうゆうしかない…
「いっしょにお菓子を食べませんか?」
おにぎりは少し驚いていたが、
「え、あ、…う、うん。」
と答えた。
別に仲間になろうといったわけじゃないけど、これで一応仲間ができたわけだ。
「ワ、ワショーイ!」
おにぎりはあくまで明るくしていた。

【残り39人】

72 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 20:36 ID:RSEDTwVy
坂田師匠は目を疑った。でも、その姿は1さんその人だった。
セットされたはずの髪はすっかり崩れ、体じゅうは真っ白だったが
それは見まごうことなき1さんだった。
1さんはしばらくゲホゲホとせきこんでいたが、やがて
「ウウ、ナンナンダヨウ」 と苦しそうにうめいた。
1さんのその声には殺意や狂人じみたところは少しもなかった。
平和な学校の平和な生徒、1さんだ。
坂田師匠はそのまま力なくへたりこんだ。よかった。
「ごめん、あまりにコワかったから、つい」 
「ダレカ人影ガミエタモンダカラサ」 と1さん。
!!!!「1さん後ろーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
坂田師匠はさっと立ち上がり、ベレッタを構え撃った。
バン、と渇いた音がして銃弾は1さんの後方の人影のほおをかすめた。
人影の正体、それはネーノだった。ネーノは手にした銃を1さんに向けていたのだ。
「1さああん、早く逃げてくれぇ!!!」 と彼は大声で叫んだ。
「エエ?」 まだ事情が飲み込めていない1さんはそういった。
「いいから早く!!そこの裏に俺の荷物がある!!持って逃げろ!」
1さんはしばらくとまどっていたが、やがて荷物をとってから
走って逃げた。
「ネーーーーーーノ!お前の相手は俺だ!」 そして3発をつづけざまに撃った。
一発はネーノの右腕に当たった。
ぱららららららららっ
彼はとっさに柱の裏に隠れた。マシンガンだ!
無血は守れなくなった。恐怖が彼を支配した。それでも彼は逃げなかった。
あと残弾が少しと、手つかずのマガジンがポケットにひとつ。
彼は柱から手を出し、残弾をやみくもに撃った。 当たらなかったようだ。
そしてマガジンを入れ替え、柱から体をだし、ネーノに向かっていった。
「うわあああああああああああああああ!!!!」 
連続で銃声が響き、彼はネーノに突進していった。ああああ。
ぱららららっ
渇いた連続音が響き、沈黙が生まれた。
あと1メートルというところで、坂田師匠はずるりと崩れた。
血がプッ、と吹き出た。
「違ったか」 とネーノがつぶやき、背をむけて歩き出した。
薄れゆく意識のなかで、坂田師匠は彼の銃をみた。
2つ銃を持っている。右手にマシンガン、左手に拳銃。学生服に俺のじゃない返り血がついている。
誰かを殺したんだ。ゆるさねえ。
ネーノはなにか足にひっかかった感じがした。
見ると、坂田師匠が右足をつかんでいた。
そして一気にがばっと立ちあがり、ネーノの首輪をつかんだ。
「くた・・ばれ」 血まみれの坂田師匠がうめいた。
ぱららっ
坂田師匠はごほっと血をはき、どさっと倒れた。
血が水たまりのように広がった。
坂田師匠は穴だらけの体で手を少しうごかしたが、やがてとまった。
ネーノはしばらく死体を見つめていたが、やがて歩いていって
ベレッタを拾い、坂田師匠の手にしっかりと握らせてやった。
そして彼は背をむけまた歩きはじめた。
それは猛獣が殺したものの力を認めたときに見せる、わずかばかりの慈悲と
弔いだった。

  【残り38人】



73 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 20:39 ID:O6eAFIN5
     ___
    /     \     ________
   /   ∧ ∧ \  /AAバトルロワイアルとか言ってるくせに
  |     ・ ・   | <AA1つもねーじゃねーか 氏ねよおめーら
  |     )●(  |  \________
  \     ー   ノ
    \____/


74 : ◆gmMfgRH7tY :04/01/31 20:42 ID:j3rog9sR
>>73禿同

75 :セブンティーン ◆6iW04TobYw :04/01/31 20:49 ID:usXMomSD
>>73-74
>>1を嫁。AAは付加だ。

76 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 21:26 ID:K/TebuGI
まるで消費者金融のコマーシャルみたいにわかりにくい様ですね

77 :◆HWJJFVYzzY :04/01/31 21:36 ID:TF0kQB9i
とりあえず>>73>>74は消えろ。

78 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 21:45 ID:f8xIW8jo
アヒャ【男子2番】は傷を治療し、廃屋の谷間をうろついていた。
さっき、・を取り逃がしたのは、彼を苛立たせ、考えさせることとなった。
一体俺は何をしているんだ?獲物を取り逃がすなんて・・・。
そうだ、俺は一瞬痛みを気にしたからだ。銃に撃たれるのは初めてだったからな。
そうと分かれば、次はこうはいかない。
どうせ死ぬこのゲーム、楽しんだ者勝ちだ。相手がどんな武器を持っていようが、次はこれで殺す。
そう言うと、アヒャは牛刀を恍惚とした表情で眺めた。が、それは一瞬で終わった。
彼の野生の本能が、誰かの気配を感じたからだ。
廃屋の窓ガラス越しに気配の主が見えた。
黒光りする銃を持ち、歩いているのは、【男子8番】キユだった。
【男子8番】キユ。たしか数ヶ月前、
「中学生で漫画家デビューだー!キユ!キユ!キユ!」
などと騒いで、みんなに週刊誌を配っていた覚えがある。
だが、数週間前に気まぐれでその雑誌を買ってみたが、彼のマンガは載っていなかった。
・・・いや、そんなことなどどうでもいい。
アヒャは牛刀を振りかざすと、雄叫びをあげながらキユの後姿目掛けて猛進した。
一撃で、仕留める。

【男子8番】キユはゲーム開始後、地図を見てとりあえずこのエリアにやってきた。
支給された武器である拳銃、警察官が使うようなそれは、彼に多少の安心感を与えてくれた。
全く、ついていないな。せっかくの連載していた漫画が打ち切られたと思ったら、こんなものに放り込まれるなんて。
ゲームを発案した、痛みを忘れた大人が嫌い。そしてあの放送だ。既に三人も殺されている。心を無くした子供が嫌い。
やっぱり優しい漫画が好・・・!?
キユは何か冷たいものが首輪の下辺りを通り抜けていくのを感じ、次の瞬間に浮遊感を感じた。
だが、その原因に思いを馳せる暇も無く、意識は急速に遠のいていった。

どさっ

地面にキユの生首が転がり落ち、主を失った身体は紅い噴水へと変貌した。
「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ」
アヒャ勝利の叫びをあげると、切れ味が落ちる原因となる血と脂を拭き取り、キユの生首を眺めた。
恐らく自分の死さえ自覚していなかったであろう彼の表情は、間抜けなほどあっけらかんとしていた。
その時だった。彼のアヒャ族の本能が目覚めたのは。
「豆豆まめ豆まめ豆まめ豆豆豆豆まめ豆!!!」
アヒャはキユの生首を掴むと、まだ血の滴るそれを喰い始めた。
「アーヒャヒャヒャヒャヒャ!!!うめぇ!豆うめぇよ!!!」
アヒャは狂っていなかった。正気だった。ただ、アヒャとしての自分に目覚めただけだった。
僅か10分足らずでキユの首を白骨にすると、アヒャは拳銃も、残った首輪も拾わずに、その場を後にした。
死ぬまでに、少しでも多くの『豆』を喰うために。






79 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 23:26 ID:ox2mUuWb
>>1さん【男子3番】はがたがたと震えながら膝を抱えていた。
先程の坂田師匠の叫び声が何度振り払っても脳裏に蘇る。
そして、彼の言うままに逃げ出した後ろから聞こえた銃声。
あの銃声は坂田師匠の言葉を信じるならばネーノ【男子15番】の物だ。
ということは。>>1さんはぐっと唇をかみ締めた。
彼は、やる気になっているのだろうか……?
>>1さんは震えた。震えながら坂田師匠の無事を祈った。
「生きて帰ってきてくれよ、坂田師匠……」
その想いは、彼の本心だった。
自分を逃がしてくれたという恩や自分のせいで彼が死んだらという恐怖もあるにはあるのだが、
それらを除いても>>1さんは坂田師匠のことが心配だったのだ。
ようは、彼はお人よしだったわけである。それも重度の。
暫く膝に頭をうずめていた>>1さんだったが、ふと思いついて自分の荷物を開けた。
赤いカバーの手帳を取り出す。几帳面な彼は、予定などは全てこの中に書き込んでいた。
>>1さんは用心深く、といったほうが良いような手つきでカバーを剥がした。
そして、剥き出しになった拍子を見て微笑んだ。
そこには一枚の写真が貼り付けられていた。
「……リル子さん」
きりりとした目元の少女が数人の女子に囲まれて小さく笑っている。
口元に上るのは歳には合わない大人びた笑みだ。


80 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/01/31 23:27 ID:ox2mUuWb
>>1さんはリル子【女子19番】が好きだった。
いつも大人びた笑みを浮かべ、何処か達観している彼女が。
時には教師さえも揶揄するような毒舌家だったが、なぜか女子には人気があった。
いわゆる「姐御」的存在だったのだろうと、>>1さんは思っている。
……そんな、クラス全員が知っていることしか知らない自分が>>1さんは歯がゆかった。
しかし、それも無理はないことなのだ。
出席番号が離れていたので日直で一緒になることもなかったし、背丈も違うので――リル子のほうが何センチも高かった――行事などで隣り合うこともない。
ただ、遠くから見るだけの片思い。

――彼女は今どうしているのだろう。

>>1さんはカバーを元に戻しながら考えた。
彼女のことだからこのゲームに参加しているとは思えない。
何処か安全なところに隠れている可能性のほうが高いような気がする。
「でもなぁ」
>>1さんは先程の銃声のことをまた思い出していた。
不良グループの良心だと思っていたネーノがこのゲームに乗ったのだ。
人間、きっかけさえあれば誰だって狂気の渦に引き込まれるのかもしれない。
勿論それは、>>1さんだって例外ではないのだろうが。
「……」
>>1さんは荷物を纏めた。
もし彼女がこのゲームに乗っているのならば止めなければならない。
また、彼女が危機に瀕しているならばそれを助けなければならない。
>>1さんは地図を広げた。ここはG-2付近だろう。
高圧電流とやらが張り巡らされている。

――ここは、エリアAの方に行ってみるかな?

エリアAには廃屋があるという。
廃屋――といってもその程度は分からないのだが、もし調度品などがあれば女子はそちらに行くだろう。
得体の知れないビルの一室で眠るのなんて、女子でなくたって嫌だ。
それは潔癖症ゆえの偏った考えであるのだが、>>1さんはそれに気付かなかった。
彼はビルの瓦礫から身を起こすと西の方を見た。

――リル子さんは僕が守るんだ。

彼の背中は朝日に照らされ、金色に光っていた。

【残り38人】

81 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/01 12:26 ID:uvhGH6vL
坂田師匠死んじゃった(つД`)

82 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/01 20:44 ID:nXMBfGgD
シナーはD地点をとぼとぼと歩いていた。
「授業妨害王」の称号を持ち、24時間365日うるさく明るいシナーといえど、
こんな状況に放りこまれては、いつもの元気もででこなかった。
安物のデジタル時計を見ると、7時ぴったりを示していた。
私物のバッグからは、1リットルのコーラと焼きソバパン1つだけをデイパックに移し、
バッグごと捨てた。
彼は放送を聞き、いろいろな所へ移動することで接触を防いでいた。
 デイパックの中に、彼の支給武器はしまってあった。
プラスティック爆弾とリモコン。それが彼の武器だった。
ああああ、ふざけんな、ちきしょう。俺はただの中学生だ。殺し合いなんて
やってられっかよ、ボケのカス野郎どもめ。
と、そのとき彼は道に何か落ちているのが見えた。
ん?何だ?なんか光ってる・・・
彼はその光るモノに近づいていった。
「これは・・・」  彼は実際に口に出して言った。
MDウォークマンじゃないか?イヤホンがまだついてるな・・・
落とされてあんまり時間はたってないな・・・
彼はそれを手にとってしげしげと眺めた。
・・ディスクが入ってる・・・ちょっと聞いてみよう・・・
彼はイヤホンを耳にぴったりと当て、1曲目から聞いてみた。
「んん、ゴホン・・・マイクテス・・」 その声は、坂田師匠の声だった。
「えーと、コレを聞いてるヤツ、イヤホンをつけてくれ。」
彼はイヤホンがしっかりついていることを確認した。
「・・・つけたか?次は音をなるべく小さくしてくれ。」
一体、坂田師匠は何がしたいんだ?疑問を胸に感じながらも、彼は
ボリュームを絞り、なんとか聞きとれるくらいの音まで下げた。
「ああ、あー、音小さいな?よし、じゃ本題に入る。」
彼はつばを飲んだ。坂田師匠は一体なにを伝えようとしているんだ?
「これはカンに過ぎないが、首輪には盗聴器がついてる。おそらくだが。」
鼓動が強く打った。さかたししょう。
「説明はしない。なにしろカンなもんでね。そこで、コレを聞いているお前に
頼みがある。大会をぶち壊してくれ。盗聴されてることをふまえて、な」
「あとなるべく人を傷つけないでくれ。仲間を探せ。じゃあ、頼んだぞ」
坂田師匠・・・彼は涙がこぼれた。そのMDのむこうには、いつもと
変わらない、正義感ある坂田師匠がいたからだ。懐かしさがこみあげてきた。
そこでMDの録音は終っていた。その後に、彼が好んだ落語が流れてきていた。


83 :サンライズdream♪:04/02/01 21:10 ID:zdYD3iIk

                  , """ ,      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                  ,' ■■ ,     < 私もいれてくれ
                  ,'     ,     \__________ 
                 ,'      ,      
            ,,' ""","        """"`,  
            ,'                 ',
           ,' ,'''" `,    ▼▼  ,'"`,   ',
           ,'  '    '   〓● ,'  ',   ',
            `,  ',  ',   〓  ,'   ,'  ,"
             `, "  ,      '   ," ,"
            , ' , '  ,       '   ',  ' ,
           ,,',,,,,'   ,    ,,   '   ', ,,,,,'
                ,   " "  "
                ,   "  "   "
               ,  "    "  "
               ,  "     "  
              ,  "      "  "
             ,  "        "  "
            , '  '          "  ",,,,, ,,
        , '' ''' "  '            ",,, ,,,,, ,, `
       ' """""""       
        
        バトル・ロワイアルか・・・、おもしろそうだな


84 : ( ・∀・)⊃ ◆HP7743lu6Q :04/02/01 23:07 ID:CAYOwBSG
ッパ【男子3番】はおにぎり【男子6番】と出会った後、エリアB(4-D)から南下していた。
ッパはとりあえず仲間が出来たのがうれしかったらしく、
先ほどからしきりにおにぎりにお菓子をすすめている。
当のおにぎりも一人は心細く、仲間を探していたらしい。

「ところでおにぎり君、バッグの中身はもう見たのかい?」
ふとッパがたずねた。
「そういえばまだ開けてないような・・・」
おにぎりはデイパックを開けた。ッパもそれを覗き込むようにして見ている。
なるほど、やはり自分と同じように地図、コンパス、懐中電灯、食料と水は入っていた。
そして肝心の支給武器、おにぎりがバッグの中をごそごそと探している。
(スパイクは武器としてではなく、登山用に彼が自宅からはいてきたものである。)
するとおにぎりの手になにかごつごつしたものがあたった。
それを取り出して見てみる。太陽にてらされて鈍く光っている。

「拳銃・・・」
おにぎりの手に冷たくそして重量感が走る。
おにぎりにとって初めての感覚。
彼はいたって普通の中学生だったため、
拳銃など持つことはおろか映画やテレビなどでしか見たことがなかった。
「拳銃か・・・」
ッパが小声で呟く。これはいわゆる「当たり」だ。
ッパは考えた。これがあれば戦闘力は大幅に増加するし、特攻を仕掛けるにしても大いに役に立つ。
ッパはこれでさらに脱出の可能性が大きくなったと感じた。

「ねぇ」
おにぎりがいきなり声をかけた。
「どうしたんだい?」
「こんなの使い方が分からないよ・・・。なにより物騒だし・・・」
普段「ワッショイ!ワッショイ!」と叫んでいる人物とは思えないほど彼の声は暗かった。
それほどこのゲームが恐ろしいものだと各々が思い始めているのだろう。
「とりあえず説明書を読んでみよう。」
もちろん説明書は入っていた。
「S&W取扱説明書」
「!!」
―S&W―拳銃にほとんど興味のない彼でもこの名前は知っていた。
「これどうする?」
ッパがおにぎりに聞く。
「とりあえず君が持っててくれよ。僕は怖いから・・・」
「そうか。じゃぁこれは僕が持っておくよ。」

その後ッパとおにぎりはふたたび歩き出した。
その心の中にかすかな希望を信じて――――

【残り38人】

85 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/02 14:40 ID:wEH9xT3y
【男子14番】ドクオは、エリアCのビルに身を潜めていた。
ホテルだったのだろうか?部屋が沢山あり、ベッドもある。
ドクオは、その一つに寝転んでいた。
羽毛の感触がドクオの体を包む。
ああ、気持ちいいぜ畜生・・・俺の住んでたボロアパートとは全く違うな・・・
ボロアパート。あの糞ボロアパートだ。
壁はボロボロ変なにおいがするし、布団は滅茶苦茶固ぇ安物だ。
しかも、毎夜隣の部屋から擬音が聞こえてきやがる。ギシギシアンアン
毎晩そんな事して楽しいか?毎晩毎晩ヤる奴ってのは決まって醜男、醜棲だ。
しかも学校まで歩いて50分もかかるとくらぁ。ありえねぇよな。
はっきり言って歩くのマンドクセし、苦労して行った所で糞どもがいるだけで面白い事なんて何もねぇからな。
だから、行かなかった。引きこもってやった。
独りのほうが気楽に生きてける。飯は糞ババァが勝手に運んできてくれるしな。
・・・という事で俺は入学式と、2年生、3年生になった当日以外はずっと家に引きこもってた。
・・・自分でも引きこもりって自覚してるよ。ああ?文句あるかコラ。
・・・だから俺はこのゲームでも引きこもってやる。武器がねぇんだよ。悪いか?

ト・・・ト・・・

・・・足音?
誰かが入ってきやがったか?そうか。当たり前だけど俺以外の奴がここに来る可能性もあるんだな。
ドクオは、ズボンからベルトを引き抜き、ドアの横の壁に体を貼り付けた。
何もその『誰か』がこの部屋に入ってくるとは限らない・・・けど、その可能性も・・・ある。
いや、あった。
ガチャリ

「・・・誰も居ないわよね・・・?」

ドクオは、開いたドアを体当たりで閉め、その人陰の後ろに回りこんだ。やるべき事はもう決まってる。
その『誰か』が、肩から反応しながら、後ろを向こうとする。
遅いよ。遅いんだよぉ。
首を捻る事は出来ねぇよなぁ。だって

ホラ。ベルト。
きつーく締まってんだろぉ?


86 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/02 14:40 ID:wEH9xT3y
それが誰なのか分からない。分かりたくも無い。
とにかく、俺の手で握ってるそれを、その誰かの首に締まってるそれを、引っ張るだけ。
前の誰かがもがく。手をばたばた。髪をぶんぶん。蟲みてぇだ。蟲。蟲だな。
声を出したいらしいな。でも出せねぇだろ。首をきつーく絞められて。
だから、出るのは隙間風のような嗚咽だけ。
すひーすひーひゅうるりひゅうるりひーっすひーっす
苦しいか?辛いか?痛いか?そんなの俺の知ったこっちゃねぇよな。
ギリギリ、という首とベルトが擦れる音だけが部屋中に響く。
もう、もがくのは、止めろ。もう、死にたいんだろ?なら、もがくのは、やめにして、おとなしく、死んじまえ。
ドクオは、なお、首を絞め続けた。
首を絞められてるその誰かも、もがき続けた。
永遠のような時間が流れる。
もう何分も経っただろうか。いや、何時間?
時の流れが妙に遅く感じる。
次第に、その誰かの動きが緩くなって来た。
最初の方は激しくもがいてたのが、今は小さく、踏み潰されたがまだ生きている蟲のような、ささやかな抵抗。
無理だと分かっていても抵抗し続けている。
その姿を見ていると、引っ張るのを止めたくなる。
でも、それは無理だ。もう・・・もう・・・!

いつしか、その誰かは床に力なく崩れ落ちていた。
その顔は、ドクオは誰なのか全く覚えていない。(ちなみに、そいつは【女子17番】モナカ。
顔は、血管が浮き上がり、薄紫色に変色している。
眼は完全に白目を向いている。そして、口から大量の泡。
・・・人を殺しちまった。・・・俺は。
ドクオは、その『誰か』のディパックから、食料とブッシュナイフを抜き取り、自分のディパックに仕舞った。
人を殺してしまったという罪悪感が、ドクオに重くのしかかる。

もう、もう、後戻りは出来ねぇよな。

【残り37人】

87 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/02 16:01 ID:S65qqXGG
モナー【男子20番】は眠そうな顔をしながら茂みの中から這い出た。
放送を聞いたあと、すぐ眠ってしまったのだ。
腕時計を確認すると、眠っていた時間は十分程度のようだ。
眠い目をこすりながら、欠伸をする。
殆ど疲れは取れていない。体中がだるかった。
「……もうひと眠り、するかな?」
一瞬そんな甘い考えが浮かぶが、無理矢理それを振り払った。
ここで眠ったら、先程のように襲撃されるかもしれない。
モナーは頬に手を触れた。
ショボーン【男子11番】に夜のうちに撃たれた傷が固まっている。
本当はバンドエイド等を傷に貼っておけば良かったのだろうが、モナーは生憎持ち合わせていなかったのだ。
モナーは溜息をつき、項垂れた。
こんなゲームの中でとはいえ、クラスメイトと話し合いが出来ないとは、思いもよらなかった。
どんなに恐怖に襲われていても、それでも皆武器を取るようなことはしないと思っていた。
それなのに。
「……」
モナーは無理矢理その考えを隅に押しやった。
これ以上考えて何になるというのだ。
今モナーが考えるべきなのは、「これからどうするか」ということだ。
モナーは普段あまり使わない脳をフル回転して考えた。
考えて出た結論。それは、やっぱり話し合うべきなんじゃないかというものだった。
ショボーンだけではなく、クラスにはまだ生徒がいる。
ギコ【男子7番】やさいたま【男子9番】、おにぎり【男子6番】辺りならば話を聞いてくれるかもしれない。
よし、やれる。
モナーは微かに希望を見出した。
早速出発しようと荷物を纏め始めたとき、微かな物音を聞いたような気がした。
この辺りは茂みが多く、どれだけ慎重に動いても音がしてしまう。
自分の物音かなあと手を休めてみたが、物音は尚も続いている。
しかもその音は少しずつ大きくなっているようだった。
「……!」
モナーの胸裏に再び恐怖の二文字が過ぎる。
誰か殺る気になっている奴が自分を狙いにきたのだろうか。
モナーはポケットから果物ナイフを抜き出した。
がたがたと震える手で握り締める。


88 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/02 16:01 ID:S65qqXGG
「だ、誰かいる……モナ?」
モナーはやっとそれだけのことを言った。
物音がぴたりと止まる。ひょこりと茂みから耳がのぞき、そして顔がのぞいた。
「め、メモラー君……モナ?」
モナーがそう声をかけると、メモラー【男子19番】はがさりと茂みから身を起こした。
そのままメモラーが近づいてこなかったので、モナーは少し安心した。
殺すつもりなら、こちらに向かってくるだろうし。
モナーは笑顔を作った。
「驚いたモナ。まさかメモラー君とは思わなくって。ところで、メモラー君……」
モナーはそこでふとメモラーの視線が一点に集中して動かないのを知った。
その一点とは、モナーの手に握られた果物ナイフだった。
ああ、とモナーは声をあげた。
メモラーは果物ナイフに怯えて近寄って来れないんじゃないか。
そして、不用意に刃物を持ち出した自分を恥じながら、モナーはナイフを鞘に収めた。
「ごめんごめん、こんな危ない物持ってちゃ近づけないモナね」
「……」
それでも何も答えないメモラーに、さすがのモナーも不信を覚えた。
「メモラー君?」
「……」
何も答えないまま、メモラーは一歩モナーに近づいた。
反射的にモナーは後退さってしまった。何故だかはモナー自身にも分からない。
ただ、メモラーが恐ろしく感じられたのだ。
それは、ショボーンに感じた恐怖とはまた違った。
メモラーがすっと右手を上げる。その手に握られている物を見て、モナーはやっと事の異常さを知った。
メモラーの手には銃が握られていたのだ。
モナーはメモラーの顔を見て、悲鳴をあげた。
メモラーの顔には何の表情も浮かんでいない。恐怖も、怒りも、何も。
「め、メモラーく」
「君も」
メモラーは呟いた。
「君も、僕を傷つけるんだろ?殺すんだろ?」
それは小さな声だったが、いやにモナーの耳にはっきりと届いた。
モナーは予想だにしていなかったメモラーの問いかけに驚いた。
「そんなわけ、ないだ」
「嘘だ!」
モナーの言葉をさえぎるようにメモラーが叫んだ。
「だって君は、果物ナイフを握ってるじゃないか」
「今は刃を鞘になおしてるだろう?」
「違う!君は僕が気を抜いた途端に切りつけてくるつもりなんだ。君は僕を傷つけようとしている!」
「メモラー、君は」
「近づくな!絶対君は僕を切りつけるつもりなんだ。そうなんだろ!?」

89 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/02 16:02 ID:S65qqXGG
メモラーは狂っていた。
表面上では分からないところで、思考の歯車がちぐはぐになってしまったのだ。
原因は、モナーが握り締めていた果物ナイフだ。
あの日幼い彼を切りつけたナイフと同じ形の刃物。
彼はそれを見て、あの時と同じように、自分が傷つけられるのではないかと思ってしまったのだ。
機から見れば小さな、呆れるほどのどうしようもないことではあるが、このゲームに放り込まれた彼にとってはそれは大事な「きっかけ」だったのだ。
本当に狂ってしまう、きっかけ。


モナーは本気で恐怖していた。
話は通じているはずだ。ショボーンの時とは違い、彼はちゃんと応答してくれる。
しかし、その答えは何処かちぐはぐで、自意識過剰で狂っているような印象をモナーに与えた。
モナーは荷物を抱えて後退さった。
メモラーはそれを見て、さらに叫んだ。
「隙を見せようって言う寸法か?!やっぱり君は僕を殺そうとしてるんだ!」
メモラーは銃を両手で構えた。
指が引き金にかかるのを見て、モナーは叫びながら走り出した。
大きな音が一つして、モナーの腕に痛みが走る。
弾が当たったのか。
痛みに体がバランスを崩しそうになるのを堪えて、モナーは走り続ける。
「……!」
もう一度大きな音とともに、腕に走ったよりは小さな痛みが右のふくらはぎに走った。
思わず転んでしまう。
走ってきたらしいメモラーが、息を乱しながらモナーの前に立った。
「こ、殺してやる、殺してやる……」
モナーは観念してめをつぶった。
もうだめだ。
メモラーが薄く笑いながら引き金を引いた――

ドンッ

90 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/02 16:03 ID:S65qqXGG
確かに銃声が響いた。はずだ。
その証拠に耳が痛く、じんじんと痺れている。近くで大きな音が起こったせいだ。
なのに、何故体が痛くないんだろう。
「い、痛っ……!」
メモラーの呻き声に、モナーはやっと目を開けた。
メモラーの手に握られている銃からは確かに発射されたという煙が出ているのだが、
モナーの体には銃弾は掠っていないようだった。
こんな至近距離ではずした?
モナーが混乱していると、メモラーががばっと顔をあげた。
思わず体を強張らせたモナーの、さらに後ろの方を睨みつけている。
モナーはそこでやっと気付いた。
メモラーの二の腕からなにか細い棒のようなものが出ている。
「お前、お前……」
「動かないで!」
意志の強そうな、耳に馴染んだ声。
はっとして、モナーは背後を振り返った。
短めのスカートと長い髪が、弱い風にひらひらと揺れている。
「モナー君」
銃に弓矢を取り付けたような物を手に持ちながら、その女子――レモナ【女子21番】が笑った。
武器を構え、メモラーを睨みつけたまま。
「大丈夫?怪我は無かった?」
「お、お前!僕を、僕を!!」
メモラーがそう叫びながら、矢が刺さったままの手で銃を構えた。
レモナが舌打ちを一つして、武器を構える。
シュッと小さな音がして、次の瞬間メモラーの腕にもう一本矢が立つ。
今度こそ、メモラーは銃を取り落とした。
「モナー君、走れる?」
レモナがモナーの腕を取った。
モナーは慌てながらも頷き、痛む足で立ち上がった。
モナーを引きずるように走り出したレモナの後姿を、メモラーは呆然と眺めていた。
その目に、狂気と怒りの光が宿るのに時間はかからなかった。

【残り36人】(>80で残り人数を間違えていた)

91 :流星 ◆XlCwCSrTaU :04/02/02 17:17 ID:YhkIuNuE
さいたま右(男子9番)は、放送の後、すぐにベットに体を横たえた。
放送で、名前が呼ばれたのは、フェラーチョ(男子17番)、あめねこ(女子1番)、みるまら(男子13番)の3人だった。
特に親しくはない生徒たちなので、右は胸を撫で下ろした。また禁止エリアも自分の居るエリアAのB-3には関係がない。
右は横たえた体を起こして、ふと、思った。

もう人が死んでるんだ・・・それも3人・・・なのに、何で僕はこんなに安心しているんだ?
いつ死ぬかもわからないこの状況で――ああ、僕はここで死ぬんだ・・・でも生きて帰りたい――嫌だよ死ぬのは・・・

右はそう思うと、少し小腹が空いたと感じ、すぐ隣の机に置いてあった自分のデイパックを漁った。
中から、ナイロン袋に密閉された、丸いパンとペットボトルに入った水(ラベルにはマターリの水なんて、馬鹿らしいネーミングが書かれていた)を取り出した。
右はパンのナイロンをビリッと開け、いかにも味気なさそうな、それを一口かじった。やはり、まずい。それは自分の手についた血の味も少し混ざっていたような感じもする。
でも貴重な食料だ大切に食べなければ。右は食料をきちんと、デイパックに詰め込み、またベットに横になった。

これからどうしようか?信用できる仲間を探す?モナーやッパ達なら信用できるかな?でも・・・自分にそんなことができる勇気があるのか?
もしかしたら、完全にゲームに乗ってる奴が居るかもしれない。だから外を歩くのは危険だ。
勇気を出してがんばってみようか?でも、体がだるい。少し休むか・・・また起きたら何か考えよう。

右はまた、ベットに体を横たえ、柔らかい毛布に身を包み、少しの間眠ることにした。
眠れば少し気も良くなる。――モナーや他のみんなは大丈夫かな?
最後に右はクラスメイトの事を心配し、ゆっくりと目を閉じ、睡眠した。

【残り36人】


92 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 00:09 ID:r9fH9y5T
モナエ(女子15番)は、建設途中のビルが立ち並ぶエリアCにいた。多分ここは地図で言うとF-3の真中辺りになる。
あちこちに放棄されたビルの骨組みと散らばっている建設材料らしきものが目につく場所であった。政府支給の時計に目を落とすと、その時刻は九時四分を指していた。
この時計が正確なら、もうA-6エリアは禁止エリアとやらに入っているだろう。
金属の棒や錆びた建設機材などに囲まれた場所に、モナエは腰を下ろしていた。出発してからまだ誰にも会っていないのはこのガラクタで作ったバリケードのおかげでもあるだろう。
エリア51を出発した後、モナエは一度E-6の高層ビルの影に身を隠し、デイパックを開けた。そこに入っていた支給武器は何の変哲もない斧であった。物足りない気もするがこれしか武器はなかった。
その後デイパックに私物から必要なもの(鉛筆や必要のだけの服やタオルなど、それと隠して持ってきた菓子類だ)だけを取ると、私物のバッグはその場に捨てた。
中に携帯電話もあったが、通話をしてみると「残念、電話は使えません」と担当官モララーの声が聞こえてきた。モナエは携帯電話は使えないと判断してこれも私物と共に捨てた。
(ちなみに、ッパ(男子13番)が何故インターネットに繋げることができたのかと言うと、このすぐ近くの電話局は政府が押さえており、電話は使えない状況だったが、ダイヤルアップ接続だけは状況を見て接続を許可していた。
即ち政府の判断でッパのインターネットは機能しているわけである)
その後、デイパックだけを持って、このF-3に来たのだ。
夜のうちにバラバラに置いてあった建設機材を集め、そこに守られる形で身を隠した。これならば一応見つかりにくいし、いざという時は多少の銃弾を防げる。
夜、そして朝、銃声が何度か聞こえていたが、特にこの近くで鳴ることはなかった。そのことに多少は安著をしたが、放送で呼ばれる退場者の名前を聞くたびに、気分が悪くなった。今も順調に殺し合いは進んでいるのだろう。
モナエはクラスメイトを殺すということは無理であったし、優勝する気もまんざらなかった。しかしはいそうですかとやられる気も毛頭なく―――つまり、脱出。この会場からの脱出を考えた。
その事に関してモナエはいろいろ考えた。高圧電流と海に囲まれた会場で、更に海には見張りの船が浮かんでいる(これはエリア51の窓から見た)。つまり四方は完全に固められているということになる。
そして大事なのはこの首輪であった。政府の思考で、いつでも爆破できる―――この首輪をどうにかしないと、脱出は到底不可能だろう。
まず考えたのは首輪そのものを外してしまうことだった。「はずそうとすると爆発します」とモララーは言っていたけれど、これはブラフなのではないかと考えた。
しかし、このゲームの安全性を考えると、やはりはずすと爆発するという機能はつけているだろう。危険な橋は渡らない、これは諦めた。
次に考えたのは首輪の機能自体を無効化するということだった。エリア51を出るときに他の部屋に目を通すと、何台もの大きなコンピューターが髪の毛のようなコードを何本もつけていたのが目に入った。
多分首輪を操作はコンピューターでやるのだろうと想像はついていたので、首輪のコントロールをしているサーバーを壊せば、首輪の効果はなくなるということだった。
しかし電話は使えない上に、そのために必要なものは持っていない。パソコン、そしてハッキングやクラッキングのスキルだ。いや、スキルに関しては問題ないか―――?
モナエは思った。冷たい壁、銃、運動、勉強。「我らが立たねばならん」聞き飽きた父親の声、射撃場、コンピュータ、暗い室内、簡易ベッド―――
ため息をつき、そのことについて考えた。モナエの父親は、この国の政府に異議を唱えていた集団の結構上の立場だった。そして政府との話し合いが無理だと判断し―――
いつものように、モナエは小学校から帰ってきた。ああ、あれは確かあたしが小学校五年生のときだ。
比較的大きな家の玄関の扉を開けると、いつもなら誰もいないはずだった。両親は共働きだったし、今日も友達の家に遊びに行こうかと思った。
しかし家の中には、両親がいた。二人ともいつもとは違う、暗い、鎮痛な表情だった。いや両親は元から頑固で明るくはなかったが、今日は何かが違うと、わかった。
赤いランドセルを玄関に置いて両親のことを不安にしつつも外に出ようとしたその時―――父親の、威圧のある声が、静かに言った。
モナエはびくっとしてドアノブにかかっていた手の動きを止めた。
「モナエ、お前は今日から―――」

【残り36人】

93 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 00:11 ID:r9fH9y5T
その日から、地獄のような日々が始まった。まずは運動しろと、両親に言われた、毎日マラソンや腕立て伏せなどをして体を鍛えた。あまり体力がなかったモナエにとって、この日々は辛かった。
すぐに拒絶したのだが、両親から返ってくる答えは平手打ちだけだった。「そんなことを言う前に練習をしろ!」何度も、部屋の片隅、涙を流すだけの日々が続いた。
小学校に行かなくなり、集中的な訓練が続いた。世界の知識などもどんどん頭に詰め込まれ、空手などもしこまれた。自殺しようと何度も思ったが、できなかった。自分は弱虫だと思いながら、同じ日々だけがどんどんすぎた。
そんなことをやっている間に中学生になった。中学生になると射撃まで教えられた(自宅を増築して地下に射撃場ができた)。毎日銃、そして的と向き合い、地下に設置された簡易ベッドで眠った。その冷たい感触は、今も続いている。
中学二年生、ようやく学校に通い始めた。彼女は成績抜群で運動も――しかし手を抜きながら学校生活を楽しんでいた。普通の女の子として生きるのは、こんなに楽しいものなのだと思い、また一人涙を流す日々だけが延々と続く。いつ終わるのだろう、これは。
一年後?五年後?あるいは永遠か?
訓練は絶えず続けられた。中学三年生になって、ようやく父親の訓練もやさしくなった時―――このゲームだ。確かに自分の実力があれば優勝も可能かも知れない。だがそれは出来ない。友達を殺すほどあたしは馬鹿な女ではない。
その考えは、テロリスト候補生として何度も訓練を受けてきた彼女の中で揺るぎないものだった。今このゲームで自分がやるべきことは、この豊富な知識を利用してみんなを脱出させる。馬鹿な自分には、それしかできない。
しかしどうやってそのことを伝えようか迷った。大声で叫んでもそれは「やる気」の奴に撃ってくださいと言ってるだけだろう。とりあえず、今は隠れながら対策を練ることだ。
ハッキング、エリア51のコンピューターに、ハッキングをかける手腕はあるだろうか?エリア51にはコンピューターを管理している人間がいるのだろう。その者達に気付かれず、ハッキングを行えるだろうか。
いくら訓練を受けてきたとは言え、コンピューターの扱いの訓練は彼女が中学三年生になってからのことで、もちろん実践なんてしたこともない。戦闘もそうだ、いくら自分が訓練を受けたとは言え、襲ってくる相手から素早く逃げれるだろうか?
―――大丈夫だろう、自信はある。自分が受けたあの地獄は、少なくともこのゲームで役に立つものくらいは与えてくれたようだ。あの世界で一番嫌いな父親に、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ感謝した。
パソコンくらいなら家で徴収できるか、電話はどうする?どうする、ハッキングのためのツールはどうする?問題は山積みだったが、今はただ行動を起こすしかないようだ。可能性が一パーセントでもやる。いやはや、うさんくさい台詞である。
あたしはベストを尽くす。これまで見続けた悪夢で、このゲームを壊すことができたら、悪魔に感謝してやろうってもんだ。
結果は努力についてくる、精一杯努力はした。あとは結果がどうなるか。どう転んでも、ベストを尽くすのみだ。
とりあえず今は行動しなければいけない、そう、まずはパソコンを探して―――
からん、という金属が転がる音、そして、ざっという靴が地面を滑る音が聞こえた。モナエは思考を中断し、身を低くかがめた。

【残り36人】

94 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 00:12 ID:r9fH9y5T
―――誰かがいる!
デイパックを掴んで、斧を右手に持った。もちろんこちらはやる気はないのだけども、相手が撃ってくるなら―――逃げないといけない、もし相手が襲ってくるなら―――どうする。
クラスメイトを危険に晒さないためにはやる気の人間を減らすのが一番効果だ。しかし、もし相手が混乱していただけならどうする?それにさっき自分でクラスメイトを殺す覚悟はないと言っていたじゃないか、決断力がない、優柔不断。あたしの悪いところ。
唇を結び―――考えた。時間は少ない。何故ならその誰かは、既にモナエの作ったバリケードが見える場所にいたのだ。ざっ、ざっという音は続いているが、止まる気配はない。気付いていないのだ。
どうする、いや待て、まず、誰なのかを確認するのが先だろう、親しい友達(不良とかではない普通の女の子とは比較的仲がよかった)なら安心できる、いつもは悪ぶっている生徒も、こんな状況だとどっちに転ぶかわからないものだ。
モナエはバリケードの隙間から顔をちらっと出し―――誰かがわかった。ドクオ(男子14番)だろう。いつもはおとなしくて目立たない、ただしパソコンは得意らしく(モナエほどではないが)、コンピュータの授業だとよく目立つ生徒だった。
彼はまっすぐ前方を見据えており、モナエから見て手前にある右手に、先が丸みをおびたナイフを持っていた。
(ブッシュナイフだ、と分かった。父親はナイフの種類も念入りにモナエに叩きこませた。ブッシュナイフ、先が丸みをおびているナイフだ。ツタや木の枝を切るのに適しているんだ。ああ、そうなんですか)
話し掛けるかどうか迷ったが(何せ、普段おとなしい人は何をするかわからない。これは偏見かも知れないが)、その考えはどうやら必要なさそうだった。ドクオの方から、モナエがいる場所に振り向いたからだ。
「あ…」とドクオが言った。モナエは何も言わず体を起こした。さい、これからどうなるか、組むことになるのか、それとも襲ってくるのか(挑発しないため斧は素早く左手に持ち替え、バリケードに隠れるように持った)?
―――十秒くらい経った。動きはなかった。ドクオは、バリケードに隠された左手の辺りをまじまじと見つめていた。そして次の瞬間、ブッシュナイフを振りあげ、こちらに襲いかかってきた(斧の端が見えたか?)!
モナエは左手に掴んだ斧を利き腕の右手に持ち替え、ドクオの動きをよく見た。縦に振り下ろすか、それとも突き刺そうとするか、もしくは―――
ドクオはモナエの二メートル先まで近づき、次の瞬間、ブッシュナイフを突き刺す動きに変わった。まっすぐ胸の辺りを狙っていた。モナエは体を横はして避けると、すぐさま見えたドクオの横顔にパンチを入れた。
「うがっ」とドクオがうめき、地面にくずおれた。ブッシュナイフが右腕から落ちて、地面を少しだけ滑った。モナエはドクオがそれを拾おうとする前に、右足でブッシュナイフの柄を踏みつけていた。ドクオがゆっくりと顔を上げた。

【残り36人】

95 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 00:13 ID:r9fH9y5T
「やる気充分のようね」
「あいててて…何て女だ」
ドクオはそう言って、顔の辺りを押さえながら起き上がった。ドクオの鼻から血が少し出ていた。我ながらいいパンチである。ドクオの表情に、焦りの色が出ている気がした。
「お、俺を殺すのか」
ドクオがそう言って、すまない、という顔になった。いやはや変わり身が早い、それとも、混乱していただけなのか?
「怖かったんだ、た、助けてくれ」
そう言ってドクオは哀願するように腰を降ろした。こうなっては殺すことは無理というものだろう。恐怖で錯乱していただけなら、仕方ないものだろう。
「ちょっとデイパックを調べるわよ」
そう言ってモナエはドクオのデイパックを拾い、自分の近くへと寄せた。
ジッパーをはずし、中身を見た。ブッシュナイフを右足から拾い、斧を自分のデイパックに仕舞うと、ブッシュナイフを右手に持ったまま、ドクオの動きに警戒しながら持ち物を物色した。これじゃあ荷物検査だ。
武器はこれ以上入っていなかった。つまりブッシュナイフは支給武器なのだろう。安著してデイパックのジッパーを閉じ、ドクオに一緒に行動しないか話し掛けることを考えた時、あるものが目に止まった。
支給された食料のパンであった。これは各生徒のデイパックに二つずつ入っているのだろうが、おかしかった、何かがおかしかった。そして、考えるまでもなく結論を出した。
「お、おい――」
ドクオが慌てた口調でモナエに話しかけた。モナエはため息をつくと、ドクオのデイパックのジッパーを閉じ、デイパックだけをドクオの方に置いた。今度は自分のデイパックの中に置いた斧を取り出し、ブッシュナイフをスカートの中に差し込んで、斧を再び右手に持った。
「殺すつもりはないわ。ただし、すぐにあたしの前から移動して。このナイフは残念だけど没収よ」
「あ、ああ」
ドクオは震える声でそう言うと、デイパックを掴み、走り去っていった。モナエはその後ろ姿が見えなくなるまで見つづけ、ようやく景色の中にドクオの影が消えると、さっきのバリケードの中に再び移動した。
―――ドクオのデイパックには、パンが四個あった、つまり―――誰かのデイパックからパンを持ち出したということだ。ということは既に彼は、誰かを殺している可能性があった。そんな生徒とは、もちろん組むことは、できなかった。
ちなみにそのパンはドクオがビルの中でモナカ(女子17番)を殺したときにデイパックから持ち去ったものだったので、モナエの推測は当たっていたことになる。
やはり、慎重に行動しなければいけない―――
そう思い、モナエはバリケードの中で再び夜を待った。行動するのは、暗くなってからでよさそうだった。

【残り36人】

96 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 17:38 ID:Lk58Z3Wz
でぃ【女子9番】は窓から、地上を見下ろしていた。
壁が全てガラス張りになっているという、悪趣味としか思えないような部屋なので、
見通しだけは良かった。
ただそれは、外から自分たちの姿が丸見えだということでもあった。
夜のうちに入り込んだビルだったので、窓の事情が分からなかったのだ。
「……」
でぃは、部屋にかかっている壁時計を見た。
先ほど見た時からあまり針は進んでいない。
時間が長く感じられた。
でぃは、しかし少し微笑みながらガラスに視線を移した。
ガラスには、ぼんやりと自分の背後が映っている。
散乱した仕事机などがごろごろと転がっている中で、その存在は異質な物に思えた。
部屋のどこかからか引っ張り出してきた毛布に包まって仮眠を取っている背中。
ガナー【女子4番】だ。
夜のうちに知り合い、いろいろあって結局仲間になった。
仲間になるといった時のガナーの嬉しそうな顔が、今でもはっきりと思い出せる。
「……仲間、か」
ほんの少し擽ったそうに、しかし嬉しそうにでぃは笑った。
仲間。青臭い言葉であるが、でぃにとっては馴染みの薄い言葉。

97 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 17:39 ID:Lk58Z3Wz
でぃには昔から仲間なんていなかった。
それは体中に刻まれた傷や、根暗な性格がそうさせているのだろうが。
幼少の時はまだ仲間に入れてくれようとする女子もいたのだが、でぃは矢張りその輪にも馴染むことが出来なかった。
皆と違う見た目や、その他のさまざまな理由がでぃに引け目を感じさせていたのだ。
そのうち誘ってくれる者もいなくなり、でぃは本格的に独りぼっちになっていった。
傷だらけで独りぼっちの根暗。
でぃがイジメのターゲットになるまでに、時間はかからなかった。
かばってくれる者は、いないという訳ではなかった。
しかし、それでもでぃは苛められ続けた。
一番酷く苛めてきた相手は、みるまら【女子13番】とづー【女子8番】だった。
みるまらには、見た目で。づーには、ある理由――でぃの親のことらしい。でぃはあまり知らない――で。
みるまらはともかく、づーには確固たる理由があるのだから、あまり抵抗してはいけないとでぃは思った。
それは結局、「苛めても反応しない薄気味悪い女」としてでぃの苛めを悪化させる要因となったのだが。
それも、全部自分が悪いのだとでぃは耐えていた。
勿論でぃだって寂しかったが、
このゲームでも、自分は独りぼっちで死んでいくのだと思っていた。
それが。

でぃは自分の腕を見た。
ガナーに切りつけられた――まあ、それは偶然だったのだが――傷に包帯が巻かれている。
清潔なガーゼが、真っ白な包帯で留められているのをでぃは人差し指でなぞった。
ガナーが、謝りながら手当てしてくれた物だ。
初めて他人に巻いてもらった包帯だ。
でぃは、小さく上下する「初めての仲間」の肩を見ながら、心の中で誓った。
この人だけは、何があっても自分が守るのだ、と。

【残り36人】


98 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 17:39 ID:Lk58Z3Wz
私のお父さんはお医者さんでした。
家族が住む所と診察する所が隣り合っているような家で診察をしていました。
特に腕が良かったわけではなかったそうですが、誰にでも親切で優しい、「町のお医者さん」みたいな感じだったそうです。
私はお父さんが大好きでした。尊敬していました。
でも、お父さんはもういません。

づー【女子8番】はC-2を高圧電線沿いに歩いていた。
手には支給武器の金属バットが握られている。
がりがりと地面をバットで引っかきながら、づーは東へと歩いていた。
その顔は、憎悪にまみれている。

私のお父さんは殺されました。
患者さんに殺されました。
その患者さんはアルコール中毒で、その日もかなり酔っていました。
意識が朦朧としているその患者さんをお父さんは治療しようとしました。
でも、

づーは地面を思い切りバットで殴った。
振動がびりびりと手に伝わる。
づーの頬に涙が一筋流れた。

でも、治療の途中で意識を取り戻したその男は、
錯乱していたのか、お父さんの首を、

首を


づーは地面にしゃがみ込んだ。
涙が後から後から溢れてくる。
乾燥した土に、涙がしみこんでいった。
「……お父さん」
今でも思い出す、その夜を。
物凄い音がして、眠っていた幼いづーは目覚めた。
隣で寝ていたはずの母の姿が見えず、づーは起き上がった。
父の所か、と診察所へのドアを開けたづーの目に飛び込んできたのは、
暴れる男とその男を取り押さえている近所のおじさん。泣き叫ぶ母と、

お父さんの死に顔は、本当に苦しそうだった。

「……」
づーは涙をぬぐった。
唇を思い切りかみ締める。血がにじんだけれど構わなかった。
バットを引きずり、再び歩き出す。

やがてその男がアルコール中毒で死んだということが私の耳に入りました。
父を殺した男に子供がいるということも、同時に知りました。
それからはその男の子供を父の敵として、私は苛めて苛めて苛めて。
そして、このゲームに放り込まれました。
その子供と一緒に。

「絶対に殺してやる。……でぃ」

【残り36人】

99 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 17:48 ID:SAYhkP7S
ドクオ(男子14番)は、エリアCの辺りをまだうろついていた。
手には既に武器は無い。あの怪物女に奪われてしまった。
――くそっ!何て奴だ!
ドクオは、その事を思い出しながら足元の石を蹴った。
・・・これからどうしよう。武器がまた無くなってしまった。
そう都合よくベルトで殺せるはずが無い。・・・という事はまた何処かに身を潜めるしかないか・・・
ドクオはそう考えると、近くの建設途中のビルに入る事にした。
瓦礫がそこら中に散らばっている。随分荒れているビルだ。
・・・ちょっと待て。
ドクオは、そのビルに一足踏み入れた途端、はるか前方に何かが横たわっているのが見えた。
死体だろうか。
ドクオは、妙な緊張感と興奮感を覚えながら、その死体へと近づいた。
そして、間近まで来てその死体が【男子10番】坂田師匠である事が分かった。
・・・坂田?
そうだ。あの俺の武器を奪いくさりやがった坂田の野郎だ。
ケケケ、こんな目になりやがって。ざまぁみろ。
ドクオは、床に蹲る坂田を嘲笑した。
・・・待てよ。
と、ドクオはその坂田が何か握っている事に気付いた。
ドクオは、その何かを坂田の手からもぎ取った。
死後硬直が始っているらしく、取るのには時間がかかった。
・・・間違いない。それは、元はドクオの支給武器であるベレッタM92であった。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!
ドクオは叫びだそうになるのを必死でこらえながら、笑った。笑い続けた。
くくくくくくく、何て俺は運がいいんだろうか!まさか奪われた支給武器が戻ってくるなんてよぉ!
ドクオはベレッタを腰にすえつけ、坂田の死体を一蹴すると、そのビルをすぐに立ち去った。
もうこんな所には用は無い。後は・・・獲物だ!俺の獲物!!
ドクオの顔には、歓喜と狂気に満ちていた。

【残り36人】


100 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 18:23 ID:r9fH9y5T
黒い、チョークの跡がいくつも残った古い黒板が前方の視界に写り、茶色い木の教壇、その奥に眼鏡をかけた―――ああ、あれは社会科のムスカ先生だ。
目の前に広がった光景は、まぎれもなくいつもの教室、いつものみんなが生活している教室そのものだった。
―――あれ?
今は殺し合いの最中では、なかったのだろうか?
左に目を転じた。すぐ左は窓になっている。自分の席は、席順で言うと一番左側の列だった。そして、その窓越しに見えたのは、これも見覚えがある校庭のグラウンドだった。
数人の生徒が、体育の授業でもやっているのか、運動着姿で走りまわっている。いつもの、窓から見る光景にそっくりだった。
右に目を転じた。自分の隣の席、いつも隣に座っているねここ(女子11番)が目についた。いつも見る横顔。少し可愛げのある、普通の女の子だ。これもいつもと同じ光景。
下を見ると、茶色い木の板が張られた机が見えた。そしてその机には、ところどころに落書きされている社会化のノートと、社会化の教科書が広がっていた。これも―――同じだった。
全てがいつもと同じだった。静かに教壇と黒板を見据える生徒、後ろの生徒と何か話している生徒、使い古したシャープペンシル、先が削れた消しゴム――
ようやく、頭に一つの思考が戻ってきた。―――夢―――
夢を、見ていたのだ、と理解した。それはあまりにも非現実的な夢だった。ばかばかしい、いくらこんな国でも、生徒を殺し合わせるってのはないだろう。それは、馬鹿げているだろう。
いつも思う、夢というものは、目覚めた時にようやく非現実的だったことに気付く。夢の中で必死に銃をもって、ごくごく温厚なモナー君を撃っていた自分が恥ずかしかった。そういえばレモナさんにボウガンで撃たれたな―――
左腕を見た。傷なんて、どこにもなかった。やっぱり夢だ、悪夢、そう、あれはまぎれもない悪夢だったのだ。
ほぅ、と小さくため息をついた。殺し合いなんて―――あるわけがないだろう、ひどい夢を見てしまったものだ。このことをごく親しい友達に話すと、笑ってくれるのは間違いないだろう。
そうだ、今は勉強に集中しないと。高校受験もそろそろ控えている。家庭用ゲーム板高校。偏差値は突破していたけど、油断してはいられない。勉強に集中しよう。
黒板を見た、そこには、何故か何も書かれていなかった。おかしいな、と感じた。「ハハ、見ろ!今川義元がゴミのようだ!」とか言って熱心に指導しているムスカ先生が、黒板に何も書かないのはおかしかった。
ああ、今は授業が始まったばかり―――いや、黒板の上に設置された時計は、既に二時間目の授業開始から三十分も過ぎているじゃないか―――
何かの映像が、フラッシュバックした。ホワイトボード、暗い室内。スーツの男、奇妙な笑み、そして、黒板に書かれた「BR法」の文字―――
まさか、そんな、ことが、あるのだろうか―――
頭がおかしくなりそうだった。これは現実なのか、夢なのか?それともあのゲームが夢で、これが現実で、夢、現実、ん、何がなんだか。銃、モナー、レモナ、ボウガンの矢――
っぱりこの現実は夢で本当はゲームはまだ続いているのだろうか、もしくは、自分が―――死んだ?
うそだ、嘘だ嘘だ、死んだならこんな回想を思いはしない、これは現実だ!殺し合いなんて―――
教壇の奥にいたムスカ先生が、いつの真にかスーツを着ていた。あの男と同じスーツの色だった。後ろ向きに立ち、黒板に何かを書き始めた。
ビー、アール、法律の法。
そんなまさか―――
その男がこちらを振り返った。その口元、にやりと笑みを浮かべ―――
「わああああっ!」
腹の奥から声を振り絞った。気がおかしくなりそうなのを、拒絶するように、叫んだ。叫ぶことしかできなかった。
突然、場面が変わった。古びた木の天井が視界に映り、どこかから射し込んだ光が、自分の体を照らし、まぶしかった。
「よかった、気がついたかぁ」
ショボーン(男子11番)は、奇妙に背の高いその男―――八頭身(男子16番)の言葉にも返事をせず、ただ、ようやく判明した現実に、絶望感だけが膨らんでいた。

【残り36人】

101 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 20:07 ID:xrClhWUX
シナーはMDウォークマンを止め、それをデイパックに入れた。
ー坂田師匠を見つけなくちゃ。もし見つからなければ、別なヤツを探して
大会本部襲撃だ。やってやる。何だってやってやる。
この爆弾も使える。大会本部襲撃にはうってつけだ。
説明書らしきものを読んで見ると、使用方法も思いのほか簡単だった。
セットして、リモコンの電源いれて、スイッチ、オン。はい死んだー。
さて、と彼は思った。彼は歩こうと足をふみだしたその時、
「オイ」と背後から声がした。

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 21:57 ID:Ql8PdM7Z
ちょっと死ぬペースが遅すぎるような気がするな。
やはり泥沼化した殺し合いがもっとないと引き込まれない。

103 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 21:58 ID:ofDDnWRG
シナーは驚いて振り返った。そこに居たのは・・・ドクオだった。
手に銃をもっており、目が明らかに狂気に満ちていた。
「あ、あ・・・」シナーは恐怖のあまり腰を抜かしていた。
「獲物、俺の獲物だぁぁ!!」ドクオが引き金を引きかけたその時・・・。
パン、パンと銃声が響いた。
シナーには何が起こったのか、サッパリ分からなかった。
ドクオはうめき声を上げ、バタついていたが、動かなくなった。死んだようだ。
「な、いったい何が・・・?」呆然とするシナー。
後ろから「危なかったな」と言う声が聞こえた。

104 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 22:35 ID:Ql8PdM7Z
ついでに
場面が飛ぶ場合はどのレスの続きか表示したほうがわかりやすい

105 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/03 23:18 ID:SAYhkP7S
>>103
狂ってるドクオがわざわざ「おい」なんて声を掛けないと思われ。
よってキャラを変えるよろし。

106 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 01:12 ID:17HuF5lZ
さいたま右(男子9番)はみじろぎした後、目を開けた。目をこすり、毛布を払いのけた後、腕に巻かれた時計に目をやった。九時四十分。
眠ったのは放送のすぐ後だったので、三時間程眠っていたのだろう。G-5とA-6は禁止エリアというものに引っ掛かっているようだった。
支給武器のはりせんぼんで傷つけた両手の傷は既に血が止まり、赤い点々がまばらに手の中に広がっていた。
ぎゅっと手を結んでも、痛みはさほどのものではなかった。大丈夫だった。
腹が小さく音を鳴らしたが、政府から支給されたパンはたったの二個だったので、節約してここは我慢することが大切だった。優勝する時には長い時間を耐え抜くため食料が―――
いや待て待て。優勝なんか考えている場合じゃないぞ。僕がすべきことは、友達を探してここから逃げることだ、モナー(男子20番)とかごくごく親しい人間を探して行動しなきゃ。
朝までの狂気はどこへやら、さいたまは正常な思考に戻っていた。眠ったことで頭の中が整理されたのかも知れない。
「とにかくここを出よう」
そう言ってさいたまははりせんぼんをデイパックの中にしまった。机の上に置きっぱなしにしていた地図と名簿も学生服の右ポケットに突っ込んだ。
毛布を持って行こうかと考えたが、やめた。大きすぎるし、私物が入ったバッグはここで捨てた方が身軽にできると考えたので、ここで毛布を持っていくと再び私物を持つことになる。
私物が入った黒いスポーツバッグを部屋の隅に置き、デイパックだけを持ってさいたまは玄関に向けて歩き始めた。
きちんと脱いであった靴を履き、閉めていた鍵の摘みを捻り、長細い銀色のドアノブに手を掛けたまさにその時―――
ぱららららら、とタイプライターのような音がさいたまのすぐ近くで響いた。心臓がどくんと波打った。
何だ、誰か、だ誰かいるのか?もしかしてぼ僕を―――
あの音は―――聞き覚えがあった。朝の放送のすぐ後、北の方で少しだけ聞こえた音だ。あの音は何だろう、銃声だろうか?
自分を狙っているという不安があった。そして、恐怖、そして狂気がぶり返してきた。慌てて鍵を掛け、その場にへたり込んで、がたがたと震え出した。
どうしたさいたま右!ここまで覚悟を決めたのに、それなのにこんな時に―――こんな時に―――
「いやああっ」と言う女子のものらしき悲鳴が聞こえた。また、ぱららららと言う音。その後、ぱん、という、単発の銃声。銃撃戦だった。
―――女の子が襲われている!
ふと、ある場面が、蘇えった。
さいたま右はさいたまトリオの(さいたま太陽大佐とさいたま左は別クラスだった)一員であり、その中で一番勇気がないと言うか、臆病というか、そういうものだった。
だが、尊敬するさいたま太陽大佐(彼は本当にすごい。正義感も立派だし、拳法を習っていてケンカも強かった。何よりさいたま右を友達だと認めてくれたことが、とても嬉しかった)が、こう言ったことがある。
あれはさいたま左が塾でいなくて、二人でさいたま右の部屋の中、テレビゲームをしていた時だ。
「なあ」
さいたま太陽大佐が、ふと言い出した。視線はテレビゲームの画面に集中し、コントローラーのキーを叩いていた。
「なんだ?」
「お前って、守るもんってのはあるか」
「なんだ、それ?」
プレイしていた格闘ゲーム、さいたま右が使っているキャラクターが、必殺技を出していた。
「だから、好きな女とか、親とか、守りたいもんくらい、あるだろ?」
「好きな女でもできたの?」
「そんなのじゃねーよ」
さいたま右の使っているキャラクターがK.Oされた。すぐに第二ラウンドが、始まっていた。
「要するに、誰かが襲われていた時、それが大事な人や、女だったら、覚悟を決めれるかってことだよ」
「むずかしいことばっかり言うなぁ、太陽は」
さいたま右はにやりと笑った。太陽大佐は唇をすぼめ、さいたま右の方をちらっと見やった。

107 :敢えて残り35人:04/02/04 01:15 ID:17HuF5lZ
「けっ、まだガキなんだろ、お前は」
「言ったなぁ」
さいたま右の使っているキャラクターが飛び蹴りを繰り出した。太陽大佐が使っていたキャラクターにあたり、ダウンした。
「後悔しないように覚悟を決めるってのも大事だと思っただけだ。ま、どっかの小説に書いてあっただけだが」
「ふーん」
さいたま右はそう言って軽くあしらったが―――内心では、太陽は僕に強くなれ、と言ってるんだな、と理解した。
自分には覚悟、勇気、そういうものがないとは前から自覚していたし、太陽のその言葉は、さいたま右の心の中にずっと残っていた。
思った。覚悟を決めるのは、今しかない。
そう、太陽が「強くなれ」と言った通り、強くなるチャンスは、もう、ここしかなかった。このまま襲われている誰かを見逃したら、自分は、自分は一生臆病のままだ。
大丈夫、覚悟は出来た。あとはただ、走り抜けるしかないようだ。
デイパックからはりせんぼんを取り出した。デイパックを持って行く心配はない。鍵の摘みを、もう一度捻った。
銀色のドアノブを、思いっきり倒した。この扉こそが、自分の超えられなかった壁、そう、自分が掴めなかったもの。
怖くはなかった。ぱららららと音がした方―――未舗装の路地の右側、人影があった。一人だったが、もう一人はどこかに隠れているのだろう。
その黒いカステラ箱のようなものを真っ直ぐ、さいたま右のいた家の、三、四軒先の向かいの家の石づくりのブロックに向けていた。
水色に近い澄んだ色の髪、あれは―――あんな髪型の生徒は、このクラスで一人しかいない。
ぁゃなみレイ(女子3番)だった。ぁゃなみは、家から駆け出してくるさいたま右を見て、はっと振り返った。カステラ箱――イングラムM11がさいたまの方に向きかけ―――
「うらあああ!」
その時にはもう、さいたま右は手にしたはりせんぼんをぁゃなみに向かって投げていた。ランニングスローだが、その小さな小さな針ボールはぁゃなみの顔めがけて飛んでいき―――
ぁゃなみがイングラムのグリップでそれを防いだ。その時には、さいたま右はぁゃなみの三、四メートル先に近づいていた。ぁゃなみが銃口を再びさいたまに向け、その冷えた瞳と、冷えた銃口を、さいたまに向けていた。
正面、ブロック塀から襲われていたらしき生徒が顔をひょこっと出した。あれは・(女子12番)だろう。こちらに向かって立ちあがり、左腕を撃たれたのか銃を手にした右手で抑えていた。
「逃げろぉ!」
そう叫んで、さいたま右はぁゃなみへと、ヘッドスライディングをする要領で突っ込んだ。同時にイングラムからぱららっ、と銃声が上がり、さいたま右の下腹部に四つ、熱い弾が食い込んだ感触がわかった。
しかしぁゃなみはさいたま右のタックルを食らってさいたま右と共に地面に叩きつけられ、手にしていたイングラムをがしゃん、と落とした。しめた!
「今のうちに…早く逃げろ!」
言ってるそばからぁゃなみのセーラーにさいたま右の口から出た霧状の血が降り掛かった。これじゃあ、もう長くはもたないだろうか。
・が泣きそうな表情になり、しかし体だけを後ろに向いて逃げ出し始めた。さいたま右は、・ににやりと笑って見せた。
あとは追撃を避けるため、そうぁゃなみが落としたイングラムを拾わなければ。そして、自分の命があるうちにぁゃなみを―――
左脇腹に、またもや痛みが走って、イングラムに手を伸ばし掛けていた右腕を落とした。ぐあ、とうめき声を上げ、無意識に左手が左脇腹へと動いた。
目線を移動した。左脇腹、ちょうど四つの穴が空いた場所の横に、ざっくりと文化包丁が刺さっていた。ぁゃなみは、マシンガンの他にも包丁を持っていたのだ。
右腕に力が入らなくなり、自分の体の下にいたぁゃなみレイが、さいたま右の体の下から抜けた。地面に落ちたイングラムを手に取り、静かにさいたま右の頭へと向けた。
さいたま右は顔を見上げた。銃を自分の頭に向けていたその眼が、ひどく冷たかった。・は既に、視界の中には確認できなかった。
何とか逃げることが出来たんだろう。覚悟はできていた。後悔も微塵もなかった。
―――思った。
僕は頑張ったよな?僕はもう、臆病者じゃないよな?さいたまトリオだって、威張ってみんなに言えるよな?
よくやったよ、太陽大佐、そしてさいたま左が、さいたま右の頭の中でそう言って親指を立てていた。
お前こそ、さいたまトリオの中でナンバーワンだぜと、太陽大佐が、言っていた。
―――ありがとう―――
ぱららら、とイングラムの銃声がもう一度だけ聞こえ、銃声は止んだ。
ぁゃなみレイは、さいたま右がいた家に入り、パンと水だけを持ち出すと、・が逃げた方向とは別の方角へ歩いて行った。

【残り35人】

108 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 18:15 ID:HaipONO9
何か>>107らへんで15人になったり色々な矛盾点があったりで101〜103はスルーになったようですね。
じゃあまたドクオが出てきますが、よろしく。

【男子7番】ギコは、思い人のしぃを探し、エリアBの付近(D-3)を歩いていた。
太陽は既に上がりきり、昨日の事が嘘だったかのように照っている。
・・・時刻は11時40分。
もうそろそろ次の放送が来る頃だろう。
ギコは、近くの岩に腰を落とし、ディパックからパンを取り出し、頬張った。
何の味付けも無いロールパン。
甘みに飢えていたギコの口内は、そのパンだけでは潤う事は無かった。
しかし、空腹感を補うには十分な量なので、まぁ、いいとしよう。
ギコは、鞘に納まった日本刀を自分の横隣に置いておいた。
そして、ポケットからいうもの煙草とライターを取り出した。
手馴れた操作で煙草に火を灯す。
煙が空へと舞い上がる。
やる気のある奴がこの煙を目印にして襲ってくる、という不安もあったが、さほど気にならなかった。
口をすぼめ、頬にたまった煙を空に向かい吐き出す。
薄い煙は空へと舞い上がり、次第に空気と混ざり、見えなくなる。
そして、また煙草から煙を吸いだす・・・
ギコは、その動作を何回も繰り返していた。
吸っては吐き、吸っては吐き・・・不思議な事に、煙草を吸っていると心が落ち着いてくる。
ギコは、短くなった煙草を床に投げ捨て、靴で踏みにじった。
そして、新しい煙草を箱から取り出し、火を灯した。
煙草に口をつけた。煙を吸う。そして吐き出す。
また煙草は短くなる。ギコは、短くなった煙草を捨てようとし、煙草を口から離した。瞬間。

チャキッ

音。
ギコの後方から、物音が聞こえた。
よくスパイ映画等で聞くあの音。
―――狙われてる!
そう直感したギコは、立ち上がり、隣においてある日本刀を、鞘を抜かないまま音の聞こえた後方へと大きく振った。
「あぐぁっ」
誰かの呻き声。そして、右手に鈍い感触と固い感触が同時に来る。
ギコは、日本刀の鞘を勢い良く外した。
シャキン、という鋭い音が響き、美しい刀身が顔を現す。
そして、そのまま刀を後ろに居た誰かの首筋に近づける。
「こ、殺す気か。」
あまり見慣れない顔。
後ろに居た誰かとは、ドクオ(男子14番)だった。

109 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 18:16 ID:HaipONO9
15人じゃなくて35人でしたね・・・スマソ

遂に見つけた一人目の獲物。
煙草を吸っているらしく、背中が隙だらけだった。
そして、その背中にベレッタを向けた。
抵抗無く殺せると思っていた。
しかし、前にいたそいつは、皮かむりの日本刀を突然振ってきやがったんだ!
その刀は、俺の右手に当った。当然ベレッタはちょっと遠くに飛んじまった。
そして、今・・・今・・・!

その日本刀を首筋に押し付けられてやがる。絶体絶命って奴だぜ畜生。

日本刀をドクオの首筋に付けているギコの表情は、怒りに満ちていた。
「こ、殺す気か。」
捻り出す様に言う。
ギコは、何も言わずに刀を首筋に押し付けた。
ひんやりと冷たい。首筋に鳥肌が立ってくる。
・・・どうするどうする!?
ドクオは、脳細胞を総動員して、窮地の脱出法を考えた。
このまま死ぬなんて御免だ。
それに、確かこいつは不良。謝っても許しちゃくれないだろう。

・・・ちょっと待てよ?
ドクオは首筋に触れている刀を見た。
切っ先が首筋にくっついている訳ではない。あくまで首筋に付いてるのは刀の横の部分。
銃ではなくこれは刀だ。
勢いをつけなければこの首に傷を付けることは出来ないわけで。
そうだ。刀に勢いをつけるには、対象と逆の方向にしならせなければいけない。
つまり、多少のタイムラグが生じる訳だ。
・・・ふふふ。つまぁり。
「・・・ギコ。あんた馬鹿だよ。」
ドクオは、勝ち誇った笑顔を浮かべながら呟いた。
ギコの顔が険しくなった。
「貴様、そんな事言える立場なのかゴルァ!」
ギコが叫ぶ。・・・馬鹿みてぇに。
後悔しろよ。俺をすぐに殺さなかった事を。

ドクオは、決心したように身をかがめた。
そして、そのままギコの下腹部に向かって突進した。
ギコは、予想外の行動に面食らったのか、日本刀を取り落とし、床に突っ伏した。
「ぐ・・・」
ドクオは、落ちた日本刀を拾い、遠くに落ちたベレッタの方へと足を進めた。
ギコがこちらに追いかけてくる。
しかし、ドクオの方が駆け出しが一歩早かった。
ベレッタを拾い、武器も何も持っていないギコに向かって構えた。
ギコが、さっきよりも更に怒りの表情を強くし、こっちを見る。
しかし、動けない。当たり前だよなぁ?死ぬかもしれないんだから。
そぉら。俺みたいな引きこもりがこんな行動取るなんて思わなかったろ?なめんなよ。

110 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 18:22 ID:HaipONO9
この顔だよ。この顔。
恐怖と怒りが混ざったこの妙な表情。
ツボにはまるッつーか・・・ひゃひゃひゃ。
ドクオは、左手に日本刀を持ちながら、ベレッタの引き金をゆっくり引き始めた。
12の3で発射だ。俺の獲物第一号・・・
12の・・・ギコが目を瞑る。
さんっ!

ドン

銃声。
ただ一発の銃声。
さようなら・・・ギコ。俺の獲物第一号・・・

痛い。

痛い痛い。

俺の右手。

痛ぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!!!

「うがああああああああああああああ!!!!!!」
ドクオは、たまらず叫び声を上げた。
さんっの合図で放たれたのは、俺の銃弾では無かった。
じゃあ、誰の銃弾なんだ・・・?
もう、何も考えられなかった。
右手の指が何本か外れてやがる。・・・銃。
・・・あれ?俺の・・・俺の銃は・・・?
パン
また、銃声。
今度は、ギコの野郎が撃ってきやがった。
え?ギコ?・・・なんでお前がさっき俺が持ってた銃を持ってるんだよぉぉぉぉ!?
もう訳が分からない。
一つだけ分かるのは、自分がまた窮地に立たされたという事だけ。
―――逃げなければ!
ドクオは、直感的にそう思い、日本刀を手にしっかりにぎりながら、誰も居ない方向へと駆け出した。
まだ、俺は生きたい。死ぬのは怖くないが、痛いのはいやだ。
ああ、畜生。右手がじんじん痛みやがる。
くそ、誰なんだ?俺の邪魔した奴は・・・
・・・だが、まだ俺は死なない。生きる。這って、這って、生き続ける。

111 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 18:43 ID:HaipONO9
「俺は殺さないのか?」
ギコが、先ほど座っていた岩場にまた座り、煙草をふかしている。
しかし、日本刀は既に無く、代わりに彼の手にはベレッタが握られていた。
そして、そのギコの隣には、【男子15番】ネーノが座っている。
「ああ。なるべくやる気の無い奴は殺したくないんだ。・・・武器もある程度集まったからね。」
ネーノが、あめねこから奪った銃、USPを手にしながら言った。
・・・そうだ。もし、こいつがあの場に居なかったら俺は殺されてた。
あのとき、ドクオは確かに引き金を引きかけてた。
でも、あいつの後ろから、ネーノがドクオの右手を撃った。・・・あの銃で。
そして、あいつが痛がってる隙に、落ちたベレッタを拾い、そして今に至る。・・・という訳だ。
「・・・ギコ。ちょっと煙草貸してくれないか?」
ネーノが呟いた。
「・・・ネーノ。お前煙草吸えるのかよ?」
そういえばネーノは、不良グループの中では唯一煙草をふかしていない。
「いや・・・お前上手そうにふかしてるから・・・そんな美味いのかなーとか思ってさ。」
ネーノが口元に笑みを浮かべながら言った。
ギコも、にやつきながら煙草を手渡し、丁寧に火まで灯してやった。
ネーノが顔に期待の色を浮かべながら煙草に口を―――
「ぶはぁっ!!」
ネーノは、すぐに煙草を吹き出した。
火がついたままの煙草が床にポトンと落ちる。
そして、ゲホゲホと咳き込む。
「だ、大丈夫か?」
「・・・駄目だ。俺の体は・・・煙草は受け付けないんじゃネーノ・・・?」
ネーノが涙目になりながら言った。
ギコは床に落ちた煙草を見つめ、『勿体ねぇな。』と思いつつも、踏みにじり火を消した。

112 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 18:44 ID:HaipONO9
「あ、そうそう。聞きたい事があったんだよ。」
ネーノが、まだ涙を顔に浮かべながらギコに向き直った。
真剣な表情だった。・・・そういえばコイツ顔の出来がいいな。
「モネーとぼるじょあ、見なかったか?」
ギコは、ただ首を振った。
「・・・そうか。」
ネーノは、それを聞いてからまたそわそわしはじめた。
そして、しばらく考えた後、また口を開いた。
「なぁ、お前しぃが好きだろ?」
ギコは、それを聞いた途端心臓がドクン、と高鳴った。
図星だ。俺の心を読むな畜生。
「・・・・悪いか。」
ギコが、顔を紅潮させながら言った。
ネーノがクスクスと笑う。
「・・・じゃあ、もししぃと出会ったら、俺の事をここで待っててくれないか。」
ネーノが冷やかしの一言でも言うと思ったギコは、少し反応に困った後にこう答えた。
「何でだ?」
「伝えたい事がある。いや、伝えなきゃいけない事があるんじゃねぇの?・・・彼女には。」
ネーノが真顔で答えた。
なぁるほど。って事はお前も・・・
「お前もあいつが好きなのか?」
ギコがニヤニヤ薄笑いを浮かべながら言う。どうだ。お前の心も読んでやったぜ。
「・・・それはちょっと違うな。彼女には姉がいただろ?実は・・・」
ネーノは、そこまで言いかけると突然口を閉じた。
「・・・どうした?」
ギコが怪訝にたずねる。
「・・・いや、何でもない。今俺が言った事は・・・忘れてくれ。・・・じゃあ、頼むぞ。ギコ君。」
ネーノは一言そう言うと、岩から腰をあげ、そのまま何処かへ走り去っていってしまった。
・・・全く。あいつは一体何なんだ?
ギコは、心の中で呟きながら、再び煙草の箱をまさぐった。
・・・無い。
・・・無い無い無い!
何回煙草の箱の中で指を回しても、それらしき感触が無い。
・・・もしかして、ネーノにやったのが最後の一本・・・?

ギコは、ネーノが走っていった方角に向かって「煙草返せ馬鹿野郎ーー!」と叫んだ。

【残り35人】

113 :2:04/02/04 22:00 ID:NuGIcPst
初めまして 参加します

114 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 22:37 ID:bmxMn0TA
ガサガサガサガサ
茂みが揺れる音と自分の呼吸音だけが響く。
顔だけが異様に熱く、喉の奥が冷たい水を飲んだようにちりちりと痛んだ。
それでも、走るのを止めてはいけない。
メモラー【男子19番】は目の前の二つの背中を睨みながら走っていた。
矢を抜いてすらいない手が激しい痛みを放っている。
それでも、追いかけるのを止めてはいけない。
目の前の標的を逃すということは、巡り巡って自分に被害が及ぶ可能性があるということだ。
怪我をした時、歩けない時、見逃した敵が襲ってきたらどうすればいい?
僕を嘲笑いながら武器を手にする敵を見た時どうすればいい?
あの時仕留めればよかったと、そう後悔しながら死ぬことしか僕に道は残されていないんだろう。
そんなのは、絶対に嫌だった。
メモラーは唇を噛んで痛みに耐えながら、銃を両手で握った。
両手を突き出し、安定感など考えずに二度三度引き金を引く。
その度に腕に痛みが走ったが、構うことの出来る状況ではなかった。
銃弾は、残念ながらどちらにも当たらなかったようだ。
それで怯んだのか、単に疲れたのか立ち止まりそうになるモナー【男子20番】をレモナ【女子21番】が強引に腕を引いて走らせる。
その様が、何故か彼を無性に苛立たせた。
メモラーは再び強引に銃を構えた。
ただ構えただけで痛みが跳ね上がる。
それもまた無視して、メモラーは引き金を引いた。
反動で銃口が反れ、またしても敵には当たらなかった。
そのまま数度引き金を引くが、小さな音がするだけで、銃声は発されない。

――壊れたのか!!


115 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 22:38 ID:bmxMn0TA
普通に考えれば弾が切れただけのことだが、狂いかけている上極度の興奮状態にあるメモラーはそうは思わなかった。
邪魔者となった弾切れの銃を捨て去ると、メモラーは腕に刺さった矢を掴み、引いた。
痛みと共に血が吹き出る。
メモラーは呻き声をあげながら矢を引き抜き、それを手に持った。
殺す。たとえ銃が無くっても、この矢で刺し殺してやる。
殺す殺す。殺す!!
「うわああああああああっ!!!」
メモラーは今までに出したことも無いような大声で叫び、矢を振りかざした。
その時、その声に反応したのかレモナが立ち止まり、くるりとこちらを見た。
チャンスだ!
レモナの手に握られているボウガンの存在を知らずに、メモラーは雄叫びを上げながらレモナに突っ込んでいった。
レモナが片目を瞑りながらメモラーに照準を合わせる。
自分の五メートル先にメモラーが来た時、レモナはしっかりと銃身を支えながら引き金を引いた。
「ぎゃあああああああああっ!!」
どすっと鈍い音を立てながら、メモラーの太腿を矢が貫く。
それでも立ち止まらないメモラーに微かに狼狽しながら、レモナは矢をセットして引き金を引いた。
「うぎゃあああああぁぁぁぁぁあああっ!!!」
多少狙いが甘くなってしまったせいか、太腿を狙った矢がわき腹に突き刺さり、メモラーはやっと仰向けに倒れた。
その手から血まみれの矢が転がるのを見て、レモナはボウガンをおろした。
すばやく歩み寄り、矢を回収してメモラーの胸の上にどんと足を乗せる。
ぐえっと不自然な呻き声をあげるメモラーにボウガンを向けながら、レモナはモナーを振り向いた。
「……どうする?モナー君。この人モナー君を襲ったんだよ。殺す?」
『殺す』という単語にメモラーがびくりと反応する。
モナーはとんでもない、と首を振った。
「レモナ!メモラー君は悪い人じゃないモナ。ただちょっと……混乱していただけで。だから、殺してしまうことはないモナ」
レモナは小さく溜息をついた。
まあ、そう言うのではないかと半ば思っていたのだが。
そもそも、メモラーが追いかけてきた時に撃ち殺すことも可能だったのだが――寧ろそっちの方が体力を失わなくてよかったような気もする――モナーがやめてくれと頼むものだから、茂みの中を全力疾走することになってしまったのだ。


116 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 22:39 ID:bmxMn0TA
モナーは甘すぎる。人を信じすぎる。
二度も襲撃されたのに、それでも人を信じようとすること自体は尊いことかもしれないが、このゲームの中では『尊いこと』はあまり重要視されないのではないだろうか。
――そんなモナーを、レモナは愛していたのだが。
「モナー君がそう言うのなら……」
レモナはボウガンをおろした。
胸に乗せた足はまだ下ろさない。
暫くメモラーの顔を観察し、その目に殆ど殺意が残されていないのを知るとレモナはやっと足を上げた。
メモラーのデイパックを持っていこうかと思ったが、メモラー自身がまだ生きているためそれは酷に思えた。
レモナは周りをきょろきょろと見渡しながら身を起こし、モナーの手を引いて歩き出した。
先程の大声で誰かが自分たちに気付いたかもしれない。
まだ少しメモラーに名残があるようなモナーを無理矢理引いて、レモナはボウガンに新たな矢をセットした。

「うっ……痛いよ……」
メモラーは涙をぽろぽろとこぼしながら苦痛の声をあげた。
腕に打ち込まれた傷からは血液が流れ続けているし、
新たに打ち込まれた矢からは新たな痛みが生まれている。

――いっそ、殺してもらえばよかった。

「がっ……」
少し身動ぎしただけで新たな痛みが体に跳ねる。
痛い。痛くてたまらない。
身動きすら出来ない。誰か、誰か助けて。
「痛い……」
「そんなに痛いですか?」
新たに聞こえた声にメモラーの少し霞みかけた意識は覚醒した。
びくりと体を震わせてしまい、再び痛みに呻き声をあげる。
「誰……?」
「……」
ヒュッと小さな音がする。
それは数度続いた。小さな物ではあったが、その音はメモラーの恐怖心を煽るのに充分であった。
「な、何するの……?」
声は何も答えない。
数度その音が続いた後に、小さな声が聞こえた。
それは、メモラーにとって最後に聞いた人の声となった。
「どうぞ、安らかに」
そしてもう一度空を切るような音がして、メモラーの頭に衝撃が跳ねた。


117 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/04 22:41 ID:bmxMn0TA
ねここ【女子11番】は暖かなまなざしでメモラーを見下ろした。
メモラーの体は、今抱き上げると温かくて、しかしぐにゃりとしているはずだった。
彼は死んでいるのだ。自分が殺した。
メモラーのこめかみは数センチほど陥没していて、即死したのは確実だった。
苦しまずにいけたのだろう。
ねここはふふっと笑った。
そして、ねここはメモラーに手を合わせると、支給武器であるトンファーをデイパックになおした。
触ったことも無い武器で最初は驚いたが、説明書がついていた事やねここの飲み込みが早かったため、夜が明けるまでに使い方をマスターしたのだ。
よく見る木製のものではなく、何か特別な材質で出来ているらしく、殺傷能力も抜群だろうと思えた。
そしてそれは、メモラーによって証明された。

――これで、かわいそうな人達を楽にしてあげられるんだ。

ねここは別に殺意を持っているわけではない。
ただ、人が苦しむのが――とても嫌だった。
人々はきっと、これから苦しみながら死んでいくはずだろう。
銃で撃たれて、ナイフで刺されて、首をしめられて――それはきっと苦しいはずだ。
だから、自分が楽にしてあげようと、そう思ったのだ。
「待っててね、皆」
ねここはデイパックを背負うとその場から離れた。
後には、涙の筋を頬に残したメモラーの痛々しい死体が残されているだけであった。

【残り34人】

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:04/02/05 01:38 ID:QJqV+Z4Y
「はーい元気でやってるかー?おまえら」
モララーの嫌に明るい声が島に響き渡った。ドクオ(男子十四番)とちっ、と舌打ちした。
「十二時になりましたー、定時放送の時間です」
ドクオは血に染まった右手(小指がなくなっていた。薬指は指がちぎれかけていた)手首の腕時計を見た。
ベルトや盤面が赤く染まっている場所があったが、何とか読めた。十二時丁度から、秒針が十秒程過ぎていた。
右手の掌を左手でぎゅっと握りながら、まだ残っている痛みを抑えた。横槍してきた誰かに撃たれてから、二十分くらいが経過していた。ここはどこだろう?D-3辺りか?
ギコ(男子七番)の支給武器らしき日本刀は、ドクオの右側に置いてあった。
ここは見通しがいい荒地だった。木や草が生い茂っており、今は木に囲まれた場所で腰を降ろしている。痛みからか顔には汗が沸き、デイパックに入っていたペットボトルに入っていた水を少し飲んだ。
デイパックのジッパーを開けるのも、ペットボトルのキャップを開ける、閉めるのも左手一本と口を使わなければいけなかった。右手がやられてしまっては、それに右手は利き腕じゃないか。
これじゃあ日本刀を振るときも力が入らないし、もしかしたら簡単に弾かれてしまうかも知れない。この放送で鉛筆を使うことになるだろうが―――利き腕じゃなかったら書くのも苦労する。
ちくしょう、俺はもうだめなのか?このまま何もできず、クラスメイトどもに殺されるてしまうのだろうか?
恐怖が大きくなった。しかしドクオは、その恐怖を何とか振り払った。大丈夫だろう、大丈夫、獲物の一人や二人くらい日本刀と左腕一本で倒せる。そうだきっと大丈夫だ。
それに右腕をやられた以上日本刀の方が使いやすいだろう。何せ銃はマガジンの交換作業がある。それに銃のハンマーを引くのにも時間がかかるはずだ。
そういえば―――ドクオは考えた。ギコに渡してしまったであろうベレッタM92Fの中には弾が残っていたが、予備マガジンはポケットの中に仕舞ったし、肝心の弾は俺のデイパックの中だ。
つまりギコは一時的には装備は強いがベレッタの弾が尽きたら丸腰だ。ヘッ。ざまあみろ。
「まず死亡者から―――」
そうだ、放送だったな。ドクオはポケットからシャープペンを取り出そうとしたが、モナエ(女子十五番)に吹き飛ばされた時か、それとも別の時の影響か、シャープペンがポケットの中で割れていた。
確か筆箱にはシャープペンしかなかったような気がする。ということは―――地図とかに禁止エリアのチェックができないってことか?
まあいいだろう、ドクオはそう思った。こんなもの記憶力だけでどうにかなるだろう。
放送は聞くだけでいい。なら、今は獲物を探すしかないな。ドクオはそう思って立ちあがった。デイパックを何とか右肩に吊り、銀色の刃が光る日本刀を左腕に持った。鞘はいらなかった。
―――さて、次の獲物は誰かな―――?
放送が聞こえ出した。
「男子の死亡者からでーす。まず、男子八番、キユくん、男子九番、さいたま右くん、十番、坂田師匠くん、十九番、メモラーくん」
坂田師匠(男子十番)の死体は間近で見たが、それ以外には数人死んでいることがわかった。死んだ生徒達の顔だけが、すぐ浮かんで消えた。
「女子はひとりでーす、十七番のモナカさんです」
モナカ(女子十七番)は自分が殺したので、既に死んでいた。これで残り三十五、いや三十四人か?まだ十人も死んでねえ。
「次、禁止エリアー、一時から、D-7、三時から、F-4、五時から、A-5。わかったかー?」
全部のエリアは自分には全く関係がなかった。とりあえず頭の中にその情報を入れると、ドクオは早く足を進めた。
「もう昼でーす。先生弁当食っておまえらの活躍見守ってるぞー、頑張れよー!」
そこでぷつっという音がして放送が切れたが、ドクオの耳には、あまり入っていなかった。

【残り34人】

220 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

>>1>>1>>1>>1>>1>>1>>1>>1&g@顏/test/read.cgi/aasaloon/1074789165/">★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)